てえてえその二

先ほどの騒動が収まり夜のとばりがさらに深まったころ合い
一人の女性がとある男の部屋に入っていく
女性はもちろん時雨だあの後他の女性に仕立ててもらい、こうしてとある男─
ウィークのいる部屋に近づいている
いつもとは違い月が似合う闇と水をイメージする服をまとっている
さながら姿は夜の女神であった
月の光により反射光でより神々しくなり、いつもとは違うきれいな時雨の姿だ
このまま進んでもいいが何より彼が起きてしまう
手慣れた動作で気配を消し、ゆっくりと向かう
やるのは分かっている夜這いだ
念には念を入れ、潜り、近づく
やがて見えたのは彼の体
すやすやと熟睡し、こちらに気付くそぶりはない
思わず見とれてしまう
普段あまりまじまじと見ることのない彼の肉体
がっしりしており、それでいてどこかはかなさを持つ
無数の傷跡達だ打撲痕に切り傷
それらがうっすらと時雨の目に映る
(こんなになるまで)それを見ていると苦しくなる
彼の経歴は聞いたのだ
生きるためとはいえ悪意にさらされ、それらに翻弄され生きてきたのだから
だからこそ皆は幸せを願うのだ
せめて自分でそれをいやすことができればいい
これからは違うのだから
ゆっくりと布団をとる
まだ彼は起きる気配はない
そしてみるのは彼の「モノ」
普段機会はないために意識するのは少ないけれど
それでも彼も男なのだと実感する
恐る恐るそれに触れる
すると途端に彼の耳が動き、苦しげな声を発した
「んん
彼女は赤くなる
彼が起きるのではと内心焦りながらも
他の人に教えてもらったそれを実践していく
それだけやっても彼は起きない色々やっていくうちに─彼女に火が付く
彼に私を見てもらいたいと─女としてのスイッチが入ったのだ
こちらがやるだけでは物足りなくなってしまった
彼の前で─自分でもし始める
その小さなくぐもった声は彼の耳に入る
起きるかもしれないというのにやめられない
こうして知らぬ間に彼を想う程にまで─
まったく運命だとさえ思う
片や元暗殺者
彼は義賊だ
裏で生き、人知れずに動き、獲物を狩る
彼は違う
弱者を救うために力を振るう─例え相手が命を狙うのものだったとしても、どのような理不尽にも立ち向かい、手を差し伸べる
いかなる暗闇もその雷光で照らすのだ
その導きに救われ、こうして再び邂逅も果たした
仮に神がいたならばこれは粋な計らいに違いないのだから
やがてその手を止めるすっかり顔は蕩け紅潮してさえもいる
これから始まるのだ─彼との交わりが
そして彼は目を覚ます─
目を開け驚き、固まった
無理もない
目の前には時雨がいたのだからしかも目を奪われるような姿で
月の光が照らしだす彼女が─とてもきれいなのだ
普段とのギャップもあり、姿が妖しいのだ
驚く彼をよそにし、彼女は言う─
「私を─もらって?」
宵闇は深まる─宴は始まったばかりだ